過去書いたブログから
以前、日本料理店で学ばせていただいたときに、文献をいろいろと読みまとめました。現場で実体験で学んだことは、奥が深いということ。
その文献だけでもアップしておくと、役立つかも…。読まれる方には何??という感じかもしれません。かなりマニアックに日本料理を勉強しました。平成17年のことですが、本は変わらないはず…。
『料理名言辞典 (1983年)』平野雅章 編 東京堂出版 昭和58年6月30日初版より引用。
「人間がつくる以上、人間が入用である。料理をつくる前に、まず人間をつくることである」 「料理をする根本は親切でなくてはいけない。魂の入った真剣なものでなければいけない。そうでないと自分がまるで機械になってしまって、自分自身、楽しいことにもならない。自分がやっていて、楽しく趣味に生くるには、正直に得心がいくように、良心に従うことが大切だ」(北大路魯山人)
『吉兆味ばなし〈4〉』湯木貞一 暮しの手帳 平成3年四月17日第9刷より引用。
入社式に話したこと 開口一番に私は、明朗でハキハキした挨拶のできる成年であってほしい、と申しました。口の中でものを言っているようなことでは、とても日本料理は覚えていけません。これはもう、基礎から間違ってしまうので、受け筓えハッキリしてほしい……これを第一に話しました。 その次には、人のいやがる仕事を進んでやっていこう、という心がけを持ってほしいということですね。…(途中省略)… 日本料理というものは、花鳥風月の風雅がふくまれていてこそで、もし、吉兆が今日の日本料理になにをしたか、ということを改めて問われたら、一口に言えば、それは花鳥風月に心をもとめた料理を発掘していった、ということだと自負しています。…(途中省略)… 人の遊んでいるときに、こんなことをしなければならない、と思うのではなく、こういうときこそ、自分は勉強して、何かを得るよい機会だと自覚して、有意義な一日にして欲しいものです。 料理の最後の勝負は、なんといっても、センスがあるかないかで決まるものだ、ということも言いました。料理のセンス、感覚、これがなかったら、やっぱり料理人になることは無理ですね。あきらまて、ほかに生きる道を考えていったほうがいいでしょう。…(途中省略)… センスがあったら、やはり料理にも、きびしい心くばりが湧いてきます。料理に対するセンスというものは、お金では買うことのできない大きな財産になるのです。
盛り付けについて学びたくて、現場で働く方は体得に近いのですね。当時の料理長に違いを尋ねたり、「この盛り付けは…」と雑誌の写真を見ていただいて教えていただいたりしました。どういう意図で盛り付けていくかを説明いただきありがたいのです。でも、本などにはそういう風なことは書かれていませんでした。「水墨画のように…」と教えてくださった方もいましたが、多分生け花とかとも同様の発想だと思いました。あと、石庭など日本のお庭も。美意識というのか、感覚的なものは共通していることがわかりました。
『完全理解 日本料理の基礎技術』野崎洋光 (株)柴田書店 2004年12月15日初版
研修で学んだ直後に読ませていただきました。体験したことが文書になっていること、そして疑問に思いながら何を質問してよいのかわからなかったことが書かれていました。この本は、かなり専門的でしたが、現場でのことがいろいろとわかるのには役立ちました。料理の仕込み方や作りかたは様々でしょうけど、考え方などは『なるほど』という思いでした。
『婦人画報1997年12月』
正月料理の盛り付け方を説明した特集がありました。今回の発表にあたって、料理の作り方は説明できないので、盛り付け方なら基本があると聞いていたので知りたく、料理長にお見せしました。掲載されている盛りつけ方の説明をさらに説明していただいたので、単にきれいとしか思えなかった写真もルールがあって盛り付けられていることがわかりました。
料理研究家が盛り付けたものも中にあったのですが、日本料理の料理人と違う点として、「食べ物以外が皿の上にある」とおっしゃっていたのは印象的な表現でした。日本料理でも、竹や葉が器として利用されますが、全く関係ないものは皿に載らないとのこと。こだわりだなーっと思いました。ちなみに、季節の花があしらっていたりはするのですよ。
『吉兆 料理花伝』湯木貞一/辻静雄 新潮社 1983年9月25日発行
現在日本料理と言っているものが昔から同じでないということに気づかされた本です。かつて、「日本料理界は吉兆という風が吹いている」ともいわれたそうです。その味と趣向を極め、気品のある日本料理は世界に誇るものとして、「世界の名物 日本料理」を標榜していたと、webページ(http://www.kitcho.com/kyoto/shuppan/yume.htm)で紹介されています。「食の基本と最高の料理は家庭にある」とし、『暮らしの手帳』誌上の約二十年にわたる連載で「吉兆の手のうちも、洗いざらい」披露して、日本料理をまもり育てようと努めたことが『吉兆味ばなし』を読むとわかります。湯木さんが1988年に料理界では初めての文化功労者の顕彰を受けたことがわかるような一冊です。
これらの本を読んでいると、近年起きた事件は本当に悲しいです。
『吉兆味ばなし 一~四』湯木貞一 暮しの手帳 平成3年四月17日第9刷
作りかたなども載っていて、読んで楽しい本です。また、今の日本料理の形が見えてきたりします。
『北大路魯山人 (別冊太陽 日本のこころ41)』平凡社 1983年spring
北大路魯山人という方がどんな方か、知らなかったので一読できてよかったです。いろんな顔をお持ちの北大路魯山人の日本料理に与えた影響を垣間見ることができました。
漫画「おいしんぼ」で名前が登場する、陶芸の世界で名前が出てくる、そんな認識でしたが、本当にすごいと圧倒させられました。
『料理名言辞典 (1983年)』平野雅章 編 東京堂出版 昭和58年6月30日初版
様々な料理に関する名言が紹介されていて、私見で話してよいのか不安ですが、共感する言葉がたくさん紹介されています。うまく使わせていただくと、表現豊かになります。
『辻留の和食器入門 (中公文庫ビジュアル版)』辻嘉一 中央公論社 1996年2月18日発行
この本には、懐石料理の盛りつけの基本が家庭用として載っています。会席料理の盛りつけの基本との違いはわかりませんでした。なぜなら、辻留は懐石料理専門店。会席の方が花があるのかな…というより、最近は会席料理のように懐石料理も盛り付けてあるからいいのかな?
『食の名言辞典』平野雅章/田中静一/服部幸應/森谷尅久 編 東京書籍 平成6年10月25日初版
これは、『料理名言辞典』の世界単位のものです。国内外の名言が紹介されています。世界中の美食家の名前が出てきます。食に関する関心の示し方は国によって違いもありますが、共通するところも垣間見ることができて勉強になりました。
『飲食事典』本山荻舟 平凡社 1958年12月25日初版1994年5月10日初版第24刷
料理の意義や日本料理についての項目を読み、現在の盛り付けは歴史的にどう変遷してきたのかと興味を持たされました。会席料理と懐石料理の区別がよくつかずにいましたが、短い文章ですが懐石料理という言葉が新しいものとわかりました。
『田村平治の会席と弁当 (1973年)』田村平治/田村暉昭 女子栄養大学出版部 昭和48年11月10日初版
女子栄養大学で教鞭もとられていた方です。日本料理のキーワードについてわかりました。 大学で教えたということもあるからかもしれません。少しだけ、テキストみたいな感じもありました。
『料理文献解題 (1978年) (シリーズ食文化の発見〈5〉)』川上行蔵 編 柴田書店 1978年1月10日初版
古文書ばかりが引用されて日本料理の歴史が紹介されます。古文書を知らなかったので、大まかなことを知るのに参考になりました。
『器と盛りつけ―懐石の心をこめて』千澄子 婦人生活社 昭和57年12月20日発行
懐石料理の盛りつけを家庭料理に取り込むことを示唆する本です。お茶の世界の方ですから、流派の違いもあるのですが、家庭料理と思えば取り入れると参考になると思う盛り付けが載っています。器についても説明があり、おもしろいのと知らないことが多いのを感じました。
『日本食文化人物事典―人物で読む日本食文化史』 筑波書房 2005年4月8日第1刷
人物で歴史がわかるようになっています。各人の本を読んでいたので、どんな人なのかを知ることができました。人となりがわかると、その方の発した言葉の凄さもさらにわかる思いがします。
『会席料理の一年 (1972年)』辻留 辻嘉一 女子栄養大学出版部 昭和47年3月1日初版
盛り付けについての辻留での考え方が文章になっていて、写真や図でよいものとダメなものが紹介されています。杉盛りの図は、正直わかるようで違いがわかりにくく、体得するものだと思いました。好みもあるとは思いますが、盛り付ける方のセンス次第…当たり前ですね。取り方が様々で、定規で測るようなものではないところが芸術的なのではと思います。
『たべもの日本史総覧』西山松之助ほか 著(京の料理 筒井紘一) (株)心人物往来社 平成6年四月5日第1刷
他の文献で紹介されている本だったので一部読みました。
『懐石料理―基礎と応用』瓢亭 高橋英一 監修 柴田日本料理研鑽会 著 柴田書店 1998年10月25日初版 会席料理と懐石料理の盛り付けには違いがありますが、何が違うのかルールなどを知りたく読んでいました。この本は、茶道の流派別の決めごとの違いがわかります。 流派によっての決め事の違いがわかってくると、お店で頂く懐石料理を見る目も変わってきます。裏千家流が多いと思わされています。しかし、ここまでしっかりと懐石料理を把握して家庭で作るというのは難しいという意味では、厳密なラインもわかりにくくなっているかもしれませんね。お茶をしていますが、懐石料理のことまで学ぶ機会なんて…。たまたま、こんな勉強をしたのでよくわかりましたが、いろんな本を読んでもわかりにくいです。特に、表千家の懐石料理を知りたいと思っても、この本を読んだから私は見分けがつくくらいです。難しいです。
『料理屋の会席料理―四季の献立』志の島忠 (株)旭屋出版 平成11年5月12日第一版第一刷
会席料理の盛りつけの基本や歴史について詳しく書かれています。陰陽五行説についてなど、中国料理を学ぶ上では必要と思っていたことが、かつての日本料理にも息づいていたことを知りました。器についても、陶芸の視点ではなく、料理用という視点で書かれています。 この方が書いた本は増えていますね。陰陽五行説など中国のことも含めて学んでいかないと、日本への影響はかなり奥深いと感じます。
『食の器の事典』荻野文彦 柴田書店 2005年5月20日初版
器について詳しく書かれています。日本の器の基本図柄などまとめられています。いろんな器があり、学んでいくと器だけで大変。漆器について、今年、輪島塗の方にいろいろお話を聞かせていただき学んだのですが、どの分野も日本の伝統的なものの存続が難しいようです。
『日本料理法大全 増補 (1)』石井治兵衛 著 石井泰次郎 校 清水桂一 訳補 第一出版 昭和40年四月30日初版 平成4年1月30日第13刷
日本料理の歴史を知るにはこの本を読まなくてはいけないと、他の本で紹介されていました。他の文献を読む前に読んでいたので、多くの文献の中身を理解するのに役立ちました。 歴史的に見るとおもしろいです。雉のさばき方などもですが、昔は包丁と箸をもって魚もさばいていたのでしょうか?歴史的な絵巻の細部を食文化としてみるとおもしろいものだなーと、美術鑑賞の一つの世界を広めてくれました。
『茶と美 第3号「懐石料理」(炉篇)』数江瓢鮎子 編 茶と美舎 昭和54年11月10日第5版
表千家の懐石料理について知るには、表千家の家元が書いた本を探す以外書かれている本があまりありませんでした。吉兆の湯木さんは表千家の茶道をされているとありましたが、料理は裏千家のようで何がどう違うのかわからなかったで、参考になりました。 盛り付けの違いもありますが、近年の違いは?あまり厳密にお茶の世界に入り込んでいないからかもしれませんが、難しいです。
『表千家の茶懐石―亭主と客の心得 (お茶人の友)』堀内宗心 世界文化社 2000年4月25日出版
表千家の懐石料理を知るために読みました。辻留は裏千家に料理を仕出ししていたということ、柿傳が表千家に仕出ししていたということも『吉兆料理花伝』で知り、違いを知ろうと思いました。この方は宗匠なので、お茶の世界はお詳しい。絶対に表千家の話しになっているという意味では手軽な本の方です。
『専門料理全書 日本料理―イラスト・調理方法・手順付き』辻勲 辻学園調理技術専門学校 1998年6月20日初版
辻学園が出している本で、テキストとして料理の作り方ものっています。後ろの方に料理屋の人脈図が載っていて、いろんな料理店のつながりを知ることができました。 どこで修行をしたかなどは、料理の違いにやはり出るようです。
関東流と関西流の違いなど、見た目も違いますが、微妙に味も違うことを、東京大好きという完全に舌も江戸っ子?の方とご一緒に食事をしてわかりました。意識していないで頂いているときは、おいしいですみますが、意識するとわかるものですね。会席料理における違いを発見させていただいたときは、嬉しかったです。一人で判別つくかと言われた私は不安です。しかし、お世話になった料理長はわかるみたいです。だから、プロの方もどちら側か…あまり意識されていない方がおおいのかもわかりません。ただ、気づけるようになると違うなーって思いました。
『25ans ELEGANCE BOOK 44 和食器』荒井務 編 婦人画報社 1998年12月1日発行
持っていた本です。改めて読んでみて、和食器を紹介するのは難しいかもしれないと感じました。
雑誌で全てを網羅なんて…難しいですよね。
『日本料理全書』曽根喜和子 編 図書出版 集文館 昭和42年四月1日初版 平成3年3月31日全面改訂版 平成15年9月20日改定3版
大学の教授が書いた本です。全般的に書かれていますが、調理専門のプロと大学教授と日本料理に対する視点が違うことがわかりました。 調理を専門にしている方の表現力もあるかもしれませんが、背負っているものが学問科学で判断していくと見えないものもあるかもしれないと考えさせられました。
『日本料理こつのこつ』中谷文雄 (株)柴田書店 1991年1月25日第7刷
料理について書かれた本ですが、盛りつけのことがはじめに書かれていました。吉兆で修行されて料理長をされていた方の本です。
『懐石の研究―わび茶の食礼』筒井紘一 (株)淡交社 平成14年9月24日初版
裏千家の方の本です。茶席における食事の変遷が書かれていました。懐石料理というようになったのも江戸時代からということ、会席料理とルーツが同じであることなどが書かれています。 歴史的に学ぶにはとてもよいと思いました。表千家とどういう風に分かれていったかなどの予備知識があるとかなりわかりやすいかもしれません。
『料理覚え書』志の島忠/浪川寛治 (株)グラフ舎 平成12年1月20日初版 平成17年10月10日第5版
料理屋に生まれて修行したにもかかわらず、途中芸術の分野で働かれ、料理の世界に戻られた人です。そのせいか、視点が他の本と違う面もあります。日本料理の変遷の途中(近年)が抜けているので、新しい本ですが、一昔前のことも詳しく書かれています。
『「うつわ」を食らう―日本人と食事の文化 (NHKブックス)』神崎宣武 日本放送出版協会 1996年2月20日第1刷
民俗学の視点から書かれた本です。会席料理という華やかな分野を調べていたのですが、日常のケの文化もハレの文化に影響を与えていることを知りました。また、日本人で西洋料理に詳しい人が増えているが、日本料理に詳しい人が尐ないことを指摘していました。確かに!日本料理は難しい…西洋料理も奥が深いですよね。
『わかりやすい日本料理のサービスマナー』市川安夫 (株)柴田書店 1993年3月10日初版 2005年6月5日9版
客としての振る舞いから接客を中心に書かれた本です。全般的に理解するには役立つと思います。流派によって客としての振る舞いはいろいろある。そんな思いはします。
『nobu the cookbook 日本語版英文版 NOBU:ザ・クックブック – NOBU: The Cookbook』松久信幸 講談社インターナショナル株式会社 2003年11月21日第1刷
『nobu 』松久信幸(株)柴田書店 2004年7月30日初版
海外で活躍されて評価されている松久さんがどんな方で、どんな料理なのか、日本料理なのかを知りたくて読みました。読んでよかったと思うのは、日本料理ではないようだけど基本に日本料理があることを他の文献を読んだ後だったので気づきました。
先日、東京で開かれているお店の前を通りました。「和」というよりは、アメリカの「和」なのかな?逆輸入された感じがしました。入ってみたかったのですが、3時ごろだったので、お茶をするお店ではないですよね。
『魯山人 もてなしの真髄』平野雅章 (株)リヨン社 2003年3月7日初版
魯山人のもてなしを中心において、もてなしの様々なことを述べた本になっています。『料理の鉄人』以来の昨今のグルメブームは、魯山人の「無理・ムダのない料理」という料理哲学の根本から考えると笑止千万と述べています。このもてなしは素敵だなーって思いました。
かなり美食家だから、現代のグルメみたいなイメージで思っていたら違うとわかりました。
『招福樓・おりふしのこと』中村秀太良 (株)世界文化社 2002年10月30日第1刷
中村氏は武者小路千家に入門しお茶を学ばれ、日本料理の店をされている方です。「決して料理本ではありません。日本の若い方々が1人でも多くこの本を御覧戴ければ之に越した幸せは有りません。」と本文にありますが、佐伯義勝氏の写真で日本美が紹介されています。とり市で、日本の建築や室内装飾をはじめあらゆる日本文化が料理にかかわっていると感じたことが、本を通して感じられます。きれい写真なので幸せな感じになります。
『小泉教授が選ぶ「食の世界遺産」 日本編』小泉武夫 講談社 2004年6月18日第1刷
茶道などのルール性について書かれた文章が、調べていくヒントになりました。 農学博士なんですよね。食文化の奥深さは食材を知っている人の方が強いでしょうね。
『日本の陶藝』永竹威 人物往来社 昭和39年5月1日初版
器について知りたいと思っていたので紹介くださった本ですが、料理を盛る器という視点ではない本では今回知りたいことはわからないとわかった本です。焼物の歴史は理解でき、役立ちました。
とても華やかな器でも、料理が載るとしっくりくるのが不思議です。きっと料理人の器との語り合いがあっているのかな?料理用に作られた器はやはり料理が載っている方が素敵だと思います。
たくさんの本を参考文献で読んでいたことを改めて思わされました。これらの本を再度探すのが困難。私物もお借りしながら読んだので、ありがたい体験でした。まだ結構売られている本もあるようです。
日本料理ブームともてはやされていますが、本当に心からおいしいと思わせてもらえる料理は「愛」あるものだと学んだのでした。外食の究極目指すところは、おふくろの味の美的バージョン。愛に溢れた料理に勝るものはないと思います。